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えりさ(ゆりな/当時小学3年)

 えりさが、
「ぶた。」
と言って、たたいてきました。
 わたしは、おいかけて、そっとかみの毛をかるくひっぱりました。
 そうっとひっぱっただけなのにえりさはなきました。
 パパは、えりさに、
「どうした。」
と、聞きました。
 えりさは、なきながら、
「何もしてないのにゆりがかみをひっぱったー。」
と言いました。
(『ぶた』ってゆってたたいたやんか)
とわたしは思った。
 パパは、しんぶんでたたいてきました。
 わたしは手をあらうところに来て、なきました。
 声を出さずになきました。
 なみだがいっぱい出ました。
 そして、水を少し出して、かおをあらいました。
 タオルでかおをふいてから、わたしはだいどころに行きました。
 なみだは、とまりました。
 母さんとパパは、けんかになりました。母さんが、
「えりがたたいたきやったがで。それにあんたほんとうのことみてないやんか。えりが『ぶた』ってゆってたたいたきなが。」
といつもよりこわい大きい声で、パパをみました。
 わたしは、そのとき、
(たたくほうがわるいがやんか)
と何ども思いました。
 でも、ほんとうのことはいえませんでした。
 またなみだが出て来はじめました。
 手をあらうところに行ってなみだがとまるまで、かおをあらって、タオルでふきました。
 そのとき、わたしは、かがみをみました。
 かおは、だいぶ赤くなってきていました。
 かおができるだけもとにもどるようにかおをごしごしあらい、タオルでふきました。
 かがみをみると少ししかきえていませんでした。
 わたしは、
(しょうがないなあ)
 と思ってそのまま、だいどころまでいきました。
 かあさんがえりさをおこる声がきこえます。
「あんたがやったきで。」
といっていました。
 しばらくして、
「おこってごめんよ。でもあんたがたたくきいかんがで。」
と、いうことがかわっていました。
 わたしは、またなみだがでました。
 そのままふとんにはいりました。
 母さんがいっしょにねてくれました。